12月10日夜、皆既月食を観察しよう ―2011年12月10日夜、全国で好条件の皆既月食―

皆既月食について

月食とは

月食がおこるしくみ(説明図)
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月は太陽光を反射して輝いています。月食とは、太陽-地球-月が一直線に並んで、月が地球の影に入ることで暗くなり、まるで月が欠けてしまったかのように見える現象です。

地球の影には、太陽光の一部だけがさえぎられた「半影」と、太陽光がほぼさえぎられた「本影」の2種類があります。月が半影に入ることを「半影食」といいます。半影はぼんやりとした影なので、目で見ただけでは月食なのかどうか、はっきりとはわかりません。一方、月が本影に入ることを「本影食」といいます。本影は暗い影なので、本影食が始まると、肉眼でも、まるで月が欠けているかのように見ることができます。一般に「月食」という場合は「本影食」のことを指します。

月がこの本影の中に入ると、月食が始まります。月の一部分だけが本影の中に入ることを部分月食(部分食)といいます。月が、影の中心からだいぶそれて通る場合には、部分月食しか起こらないこともあります。
一方で、今回の月食のように本影の中にすっぽりと入ってしまうと、部分月食に続いて皆既月食(皆既食)となります。この本影には、通常は、地球の大気によって屈折した赤い光がわずかに入り込んでいるため、しばしば皆既月食中の月は「赤銅色」と表現されるような「赤黒い色」で見られます。

皆既月食が終わると、再び部分月食となります。やがて本影から月が完全に離れると、月食(部分月食)が終わります。しかし、もしかしたら月食が終わったあとも、月面に少しだけぼんやりとした暗さが残って見えるかもしれません。これは半影食が続いているためです。やがて半影食も終わると、丸い月に戻ります。

2011年12月10日~11日の月食の経過

2011年12月10日~11日の月食の各現象時刻を表にまとめます。

現象名現象時刻備考
半影食の始め10日20時31.8分 
月食の始め 10日21時45.4分 
皆既月食の始め 10日23時05.7分 
食の最大 10日23時31.8分 食の最大における食分(注):1.110
皆既月食の終わり 10日23時58.0分 
月食の終わり 11日01時18.3分 
半影食の終わり 11日02時31.7分 

注:月食の欠ける深さは「食分」という数値で表される。食分0.5とは、月のみかけの直径の50%が地球の影(本影)に入り込むことを意味する。食分が1.0以上になると、月が地球の影に完全に入り込み、皆既月食となる。

地球の影に対する月の動き(説明図)
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2011年12月10日の月食では、晴れていれば、日本全国どこででも、月食の始まりから終わりまでを見ることができます。月食の経過は、観察する場所にかかわらず、上記の表の時刻で進みます。

月食(本影による食)は21時45分に始まります。これより前に月は地球の半影に入っていますが、半影は本影のように暗くないため、半影の中に入った月が暗くなっていることには、ほとんど気づかないでしょう。
月は徐々に欠けていき、23時06分には、地球の本影の中にすっぽりと入ってしまいます。皆既月食の始まりです。
月は地球の影の中を横切って、23時58分に影の反対側に達し、本影を出ます。
それから、月の欠けている部分は徐々に小さくなり、翌日11日の1時18分に部分月食が終わります。

月は、この後もまだ半影の中にあるため、しばらくは薄暗い部分が月面に残って見えるかもしれません。この半影食は2時32分まで続きますが、半影の縁ははっきりしないため、いつ終わったかを見極めることは難しいでしょう。

 なお、各地の月の出や月食中の月の位置は、暦計算室の月食各地予報で調べることができます。ぜひご参照ください。

皆既月食中の月の色

皆既月食になると、月が本影の中に完全に入り込むため、月がまったく見えなくなってしまうように思われます。しかし、実際には本影の中にわずかに回り込む光の影響で、そうはなりません。

地球のまわりには大気があります。太陽光がこの大気の中を進むと、大気がレンズのような役割をして、ほんのわずかですが屈折して進みます。
この時、青い光は空気の分子によって途中で散乱してしまいます。これに対して赤い光は散乱しづらいため、屈折して本影の中に入り込むのです。このかすかな赤い光が皆既中の月面を照らします。このため、皆既中の月は赤黒く見えるのです。

皆既中の色は月食の度に変わることが知られています。大気中にチリが少ないと、大気を通り抜ける光の量が多くなり明るいオレンジ色に、逆にチリが多いと通り抜ける光の量が少なくなり、黒っぽく見えます。今回の月食では、皆既中の月はどのような色に見えるでしょうか。ぜひ観察して、ご報告ください。

皆既中の月の色について、さらに詳しい解説はこちら

最近の皆既月食と次回以降の皆既月食

地球全体で考えると、最近では、2010年12月21日、2011年6月16日、そして今回の2011年12月10日と、おおよそ半年ごとに皆既月食が起こっています。しかし日本では、2010年12月21日の皆既月食は、皆既月食が始まる少し前に月の出となったため、月が欠けていく様子は見ることができませんでした。しかも、悪天候の地域が多く、実際に欠けた月を目にした人は多くなかったと思われます。また、2011年6月16日の皆既月食では、皆既月食が始まる前に月が沈んでしまいました。
これらに比べて、今回は、日本全国で月食の始まりから終わりまでを見ることができる、たいへん条件のよい皆既月食です。このように条件よく観察できる皆既月食は2000年7月16日以来のことです。

また今後、世界全体で考えても、皆既月食は2014年まで起こりません。

このように、今回の皆既月食は、それほど頻繁には訪れない絶好の機会ですので、ぜひ、機会を逃さず観察していただければと思います。